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好きなものをつらつらと書き綴っています。 書人:蓮野 藍         三国恋戦記の孟徳に夢中。  ボカロ(心響)SSも始めました。
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突発小説。

オリジナルです。



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男が一人、自室で本を読んでいた。

何も予定がない、何もない日。
滅多にない自由時間を久々に家の中でゴロゴロと出来る日だった。
馴染みあるベッドの上で仰向けになり、男は一冊の書物に目を通している。
何週間か前にバーゲンセールで売られていた本。
買って暫くは多忙で読めず、忘れかけていた頃に掃除で発掘したものだ。
書物には熊野水軍の頭である熊野別当が云々、戦国に活躍した九鬼何某という人物について云々書かれてある。

ふと男は伊勢海老を食べたいと思った。

理由は特にない。
強いていえば、ただこの書物は伊勢についても記載されていて、伊勢という単語をキーワードに連想されたものが伊勢海老だったから。だろうか。

伊勢海老といえば高級食材の一つ。
何かの祝い事や、旅行先の食事くらいでしか口に出来ないだろう。

近所のスーパーで売ってるだろうか。
いや、ちょっとした都会やデパートでないと売ってないかもしれない。

窓越しの音しかない世界の中で男はツラツラと考え、己の身体に寄り添うようにくっついていた存在に気付いた。
視線を移さなくてもわかる。
暖かくて柔らかいもの。飼い猫のネコだ。
猫だから名前はネコ。
単純でわかりやすくていいと男は思うのだが、家族は単純過ぎると呆れていた。

「ネコ、お前も伊勢海老食べたいのか?」

返事が返ってこないことはわかっている。
だがつい話し掛けるように頭があるあたりを撫でた。掌にふわふわした柔らかい毛が触れる。頭ではなく背中だなと感じた。
本の頁を開いたまま顔の上に乗せて手を離し、反対側の手でネコを撫でる。


かぷっ


噛まれた。
男は自覚した。
猫の小さい歯が軽く指先にあたっている。
今不機嫌だったのだろうかと思いきや、今後は舌で舐めてきた。
猫特有のざらついた感触を感じる。

これは猫の甘えだろうか。

ネコが指やら手の甲を舐め、頭をこすりつけてくる。
チリチリと首輪の鈴がなった。


男はネコのさせたいようにさせた。

和な一日。
こういう日もいい。



だが、
男は思う。



腹の上に乗っかるのは止めてほしいかもしれない。



苦しい。
男は一人呟いた。


終わり

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