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好きなものをつらつらと書き綴っています。 書人:蓮野 藍         三国恋戦記の孟徳に夢中。  ボカロ(心響)SSも始めました。
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書き足らず、まだ書く孟花。



相変わらずED後かと思いきや、ゲーム中の設定でも読める感じです。
孟徳が(ようやくきた女の子)花を構いたくて構いたくて仕方ない頃の話。







拍手[12回]




ピカピカっとあたりが光り、続いて雷鳴が轟く。
床が微かに揺れた。
「おお、今日は特に活躍してるな」
何が、とも言わず。
誰にともなく呟くと斜め後ろを歩いていた従兄弟が「そうだな」と相槌をうった。
途端に再度光る空。
やはり今日は絶好調のようだと孟徳は悟った。
雷が。
「こんなに頻繁に雷が鳴るなんて久しぶりかもな」
「そうだな」
「どこか、近い場所に落ちるかもしれない」
「そうだな」
「花ちゃん、大丈夫かな」
「……」
「こんなに雷が落ちると不安になるだろ。そばにいるのがあの文若だし」
「……」
相手が聞いていようといなかろうと、無視で孟徳は話続ける。
否、聞いていてあえて反応しないのは丸わかり。
孟徳はそのような事を気にしたりはしない。予想してた反応。
そんなことを気にしていたら丞相という名の重い役職は一日ももたない。やっていけない。

ピタリと進めていた足を孟徳はとめた。
必然と元譲の足も止まる。
この場には孟徳と元譲以外誰もいないが、それは執務室から脱走していた孟徳を見つけた元譲が連れ戻す途中だったからだ。
その道中で何かに気付いたのかと元譲は思いきや
「これから花ちゃんのところに行こう」
そう言い放った。
「今からか?」
風が荒れ狂い、雨も遠慮という言葉を知らないかのような土砂降りっぷり。
そのおかげで元譲は勿論、孟徳の袖は軒下にいるのに関わらず多少なり濡れている。更に髪を結わいていない孟徳の髪は風の勢いに流れるまま流されているので荒れ放題だ。
この状態で王佐と呼ばれる文若の元へ行ったならどうなるか、火をみるより明らか。
元譲は深い溜息をつきたくなった。
「……俺が止めても行くんだろうな」
「当たり前だろう」
苦々しく言う元譲の言葉をバッサリと刀で両断し、赤き覇王は「そうと決まったら行くぞ」と赤い鳥が描かれている衣を翻した。
諦めにも似た深いため息を吐き、鳴りやまない雷鳴を聞きながら従兄弟の我儘に従うべく元譲は止めていた足を動かした。


「丞相、お呼びいただければ此方から行きましたものを……」
「あれ、花ちゃんは?」
席を立ち、礼をもって出迎えた部屋の主の言葉を無視し、孟徳はキョロキョロと室内を見渡して問う。
いるだろうと思っていた存在が見えないのだから当然といえば当然といえる反応なのだが。
途端に文若の眉間の皺が深くなったのを元譲は見た。
「あの娘に何用でしょう」
「今日は雷が凄いから、大丈夫かなってご機嫌伺い」
ほら、女の子って雷苦手だし俺は女の子に優しいだろ?それに傍にいるのが俺じゃなくて文若だから心配で……。
とペラペラ淀み一つなく話す孟徳。
彼が話せば話すほど文若の皺が比例して深くなっていくのは気のせいではないだろう。
油に火を注ぐような発言しかしていないのだから。
案の定、文若は皺は深く刻まれ、器用に片眉を上げて問うた。
「……恐れながら丞相」
「気がきかない奴だな、俺は花ちゃんに用があるんだけど」
「午前中に私が丞相にお届けした書簡、あれはもう出来ているのでしょうか」
「そのうち出来る予定だ、安心しろ」
「……」
「文若、耐えろ」
相手が何かを言いたい気持ちは山ほどわかる。
その相手が自分とともに孟徳の補佐兼後始末をしている文若だったら尚更。
だが、自分たちが忠告として言ったからといって孟徳が改めるのは皆無に近いこと。
今は孟徳のやりたいようにさせ、あとは此方の要求を求めるだけだ、と文若に視線で伝えた。
「……聞いていただろう。お前に客だ」
眉間の皺は少しもほどけぬまま男は深く溜息をついた。
そして漆黒の文官が低い声で自分の斜め下に視線を向けて言った。
そこは文若の机で、出入り口からみたら死角に入る場所。孟徳は一つ瞬く。
「花ちゃん?」
孟徳の声が心なしか優しい声音になっているのを文若も元譲も気にとめず、計三人分の視線がそこに注がれる。
そこから細い声が聞こえてきた。
「はい……」
「……そんなところで何やってたの?」
返事をして顔を出したのは確かに孟徳が探していた少女。
片手で文若のの袖の部分を握り、微かに顔が赤いが泣いた後は見受けられない。
孟徳はなぜ文若の机の影から出てきたのかが理解出来ず問うと少女の代わりに文若が答えた。
「雷が怖く、役に立たないので部屋に返そうにも戻れず、雷が遠のくまで待っていたところです」
「文若の机の影で?袖をつかんで?」
「その方が少しはマシなのだと」
「花ちゃん、そうなの?」
少女に視線を向け確認をとると、コクンと首が縦に振られた。
「はい。人のそばにいると、少しは雷は遠く感じられるし、安心出来る気がして……」
他人に見られたのが恥ずかしくなったのか、文若の袖を掴んでいた手を離す。
握られた箇所は皺になっていた。
「ご迷惑かけて御免なさい、文若さん」
「正直いってかなり仕事しずらかったが仕方がない」
「文若、もう少し柔らかく言えないのか」
あまりにも辛辣な台詞に苦言を呈したのは勿論孟徳で、同情の眼差しを少女に向けた。
「御免ね花ちゃん、キツい言葉ばっかりの朴念仁で」
「いえ、私が迷惑をかけてるのは事実です。それに文若さんのおかげでお仕事を覚えて、少しだけ手伝いをさせてもらっています。だから、文若さんは悪い人ではないです」
「そう……」
孟徳の言葉に同意するどころか反対に文若を褒めた花。
孟徳は内心面白くないと思いながら答えた。
その反対に文若は軽くフンと鼻をならして素知らぬふり。
眉間に皺寄せた顔をしていても嬉しいくせに。心の中で己の片腕を毒舌ついた。
そんな孟徳の心を知ってか知らずか、文若が少女に伝える。
「花、今なら雷が収まっているようだから部屋に戻れ」
「そうですね、今なら大丈夫かもしれません」
コクンと文若の言葉に首肯した。
途端、ピカッと光った空。轟く雷鳴とともに響いたのは少女の悲鳴。
「きゃあ!!」
落ちた。
孟徳や元譲が悟った途端、少女は傍にいた文若の袖をもう一度掴んでしゃがみこんだ。大人しい彼女から出た声とは思えないほどの声の大きさに孟徳と元譲は軽く目を見張る。
文若は今日一日で慣れたのか、自由な方の片手を額にあて、再度溜息をついた。
「またか」
「これをずっとしてるのか?」
返ってくる答えはわかっていても確認をとるように言う孟徳だが正直いって、孟徳としては羨ましい通り越して憎たらしい。
「おそらく、雷の日は一日は続くでしょうね」
「今すぐそこを変われ、文若」
「お断り申し上げます。丞相にはやっていただかなくてはならない仕事がそれこそ山ほどございますゆえ」
「花ちゃんがそばにいるだけでそれでいいんだよ、分からない奴だな」
「雷が落ちる度に悲鳴をあげる娘がそばにいては集中出来ないでしょう」
「出来るさ」
「いいえ、出来ません」
こうして始まった文若と孟徳による攻防戦。
いつになったらこれは終わり、孟徳による決済を俺は貰えるのだろう。
人知れず元譲は深いため息をついた。

二人が話し合うのは構わないが、雷に怯える少女のことを忘れてはいないか。

自分が娘を部屋まで連れて行くのは別に問題がないわけではないが、
それを孟徳が快く許すわけがない。
逆に自分が送り届けると言いだし、挙句に雷が遠のくまで少女のそばを離れない可能性がある。

これでは仕事にならない。


さて、どうするべきか。



元譲はこの場の打開策を探しながら、問答が続く二人の大人の近くで雷に怯える少女に同情を覚えた。

「娘、すまないな」


元譲の言葉はちょうど雷の音と重なり、花の耳にちゃんと届いたかどうか不明だった。







終わり
ようやく終わった^^;
終わるに終われなかったのです。

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