好きなものをつらつらと書き綴っています。
書人:蓮野 藍
三国恋戦記の孟徳に夢中。
ボカロ(心響)SSも始めました。
黒い線と線と交差する場所がいくつもある。
その一つにパチンっと静かな静寂の中で鋭い音が小さいながらも響いた。
黒い石がそこに置かれたのだ。
途端、軽く息を詰めるのが一人。
女性が一人その一点のみを凝視して微動もしない。
そんな彼女の様子に気をよくしたのか、ニヤリと男は不敵に笑った。
「次はどうする?嬢ちゃん」
顎を片手で撫でながら女性を見つめる姿は大きく、思わずひるみたくなるが、そうにはならない。
瞳が彼と同じ色だからなのか、どこか優しく見えるからかもしれない。頭の片隅で彼女は思った。
「何か余計な事、考えてるな……」
「……!!」
向かい側に座る女性の顔を覗き込み呟かれ、目を見開いた。
部屋の中だからとはいえ、太陽の光が差し込み、彼の赤い瞳が反射し光る。
髪と同じその色は光を受けることで何とも言えない鮮やかな赤。
夕暮れの赤とも、炎の赤とも違うそれ。鮮やかな色とはこういうのを言うのだとその時知った。
思わず見とれてしまう程の綺麗な色に見入っていると、相手は一つ瞬き、更に顔を寄せてきた。
瞳が大きくなったことで顔がもの凄く近くにあると気付き、頬を染め、慌てて頭を少し後にそらす。
それに彼は気にすることなく低い声で
「もしかして、見とれてたか?」
何に、とまでは言わない。
だが、瞳に見とれていたのは事実。
「ち、違います。ただ、瞳が綺麗だなって……」
嘘がついてもすぐボロが出そうだと、女性は正直に話した。
亀の甲より年の功。年長者には逆立ちしても敵わないことがある。
相手が彼の父……舅なら尚更そうだと感じずにはいられない。
「ほう、俺の目がかい?」
「はい、ちょうど太陽の光にあたって、サンゴの赤や炎の赤とは違った鮮やかな赤い色で輝いてて……」
ジッと見てしまってすみません。という言葉は最後までならず、その代わりに小さな悲鳴が漏れただけだった。
気付いた時には二人の間にあったはずの碁盤はなく、男の体は前に進められ、すぐにでも腕を伸ばせば抱き寄せられる距離にあり、状態にあった。
「じゃあ、碁なんて止めてずっと飽きるまで見ているかい?」
「え?」
「オレの目の色、気に入ったんだろ?だったら碁なんかやるんじゃなくて、見つめあってる方が有意義だろ」
「気に入ったというか、綺麗だなぁと思っただけで、見つめあうって……え……?」
なぜそういうことになるのだろう。
彼女は理解しようにもできず、軽く混乱した。
「オレだって見つめるのは碁でもムサイ男どもじゃなくて、嬢ちゃんみたいな可愛い子がいいからな。な、いいだろ?」
「私をみてても、何も出ませんよ?」
「何かもらおうなんて期待してないさ。逆に……」
中途半端に切られ、気になり小首を傾げる。
「逆に、なんですか?」
「気になるかい?」
「気になると言えば、気になります」
正直に頷いて答えれば、彼はおおらかに笑った。
顔をはなし、ポンポンと優しく頭を撫でられる。大きく暖かな手だった。
「嬢ちゃんは本当に素直で、可愛いな。我が倅とは大違いだ」
「ヒノエさんが、ですか?」
「おうよ。……と、噂をすればだな」
どこか、部屋の外側に視線をやり、次の瞬間にはニヤリと意地悪く笑うのを彼女は見た。
「ヒノエさんがこれからいらっしゃるんですか?」
今日は外に出て仕事してるはずだから、邸にはいないはず。
「ああ、くるさ。多分、オレ達が一緒にいることを知ったから、駆けて戻ってきたんだろうな」
と話し終えた数秒後、御簾が乱暴にあげられる音がした。
驚き振り向くと、そこには影の人。
本当に急いで戻ってきたのだろう。肩が上下し、息が上がっていた。
「ヒノエさん!!」
立ちあがり、彼の人の元に寄る前に近づいてきた彼に抱き寄せられた。
力強く抱きしめられると同時に途端にふわりと彼の香りが広がり、鼻をくすぐる。
「何やってんだよ」
座っている男性と向き合うように立ったまま見る。
先ほどまで話していた人の声とは違う意味での、低い声。
「何って、可愛い義娘との交流だよ」
見てわからんのか、と横にどかされていたらしい碁盤を指さす男。
「余計な手を出してんじゃないだろうな」
「何もしてない。ただ嬢ちゃんがオレの目を気に入ってくれたんで、見つめあおうとしてたところに邪魔しやがって」
どうみても火に油を注いでいるとしか思えない台詞である。
「それのどこが何もしてないんだよ!!十分してるじゃねーか!」
彼の炎は文字通り更に燃え上がり、くわっとヒノエは牙を剥き出して威嚇した。
途端、彼の父は大きく口を開けて大笑いをしたのだった。
これが熊野頭領一家の一コマ。
終わり
湛快と絡んでみたかったんです(笑)
湛快はヒノエのことを可愛く頼もしく思いつつ、子を思う親心の裏返しでおちょくってるに違いないです。
その一つにパチンっと静かな静寂の中で鋭い音が小さいながらも響いた。
黒い石がそこに置かれたのだ。
途端、軽く息を詰めるのが一人。
女性が一人その一点のみを凝視して微動もしない。
そんな彼女の様子に気をよくしたのか、ニヤリと男は不敵に笑った。
「次はどうする?嬢ちゃん」
顎を片手で撫でながら女性を見つめる姿は大きく、思わずひるみたくなるが、そうにはならない。
瞳が彼と同じ色だからなのか、どこか優しく見えるからかもしれない。頭の片隅で彼女は思った。
「何か余計な事、考えてるな……」
「……!!」
向かい側に座る女性の顔を覗き込み呟かれ、目を見開いた。
部屋の中だからとはいえ、太陽の光が差し込み、彼の赤い瞳が反射し光る。
髪と同じその色は光を受けることで何とも言えない鮮やかな赤。
夕暮れの赤とも、炎の赤とも違うそれ。鮮やかな色とはこういうのを言うのだとその時知った。
思わず見とれてしまう程の綺麗な色に見入っていると、相手は一つ瞬き、更に顔を寄せてきた。
瞳が大きくなったことで顔がもの凄く近くにあると気付き、頬を染め、慌てて頭を少し後にそらす。
それに彼は気にすることなく低い声で
「もしかして、見とれてたか?」
何に、とまでは言わない。
だが、瞳に見とれていたのは事実。
「ち、違います。ただ、瞳が綺麗だなって……」
嘘がついてもすぐボロが出そうだと、女性は正直に話した。
亀の甲より年の功。年長者には逆立ちしても敵わないことがある。
相手が彼の父……舅なら尚更そうだと感じずにはいられない。
「ほう、俺の目がかい?」
「はい、ちょうど太陽の光にあたって、サンゴの赤や炎の赤とは違った鮮やかな赤い色で輝いてて……」
ジッと見てしまってすみません。という言葉は最後までならず、その代わりに小さな悲鳴が漏れただけだった。
気付いた時には二人の間にあったはずの碁盤はなく、男の体は前に進められ、すぐにでも腕を伸ばせば抱き寄せられる距離にあり、状態にあった。
「じゃあ、碁なんて止めてずっと飽きるまで見ているかい?」
「え?」
「オレの目の色、気に入ったんだろ?だったら碁なんかやるんじゃなくて、見つめあってる方が有意義だろ」
「気に入ったというか、綺麗だなぁと思っただけで、見つめあうって……え……?」
なぜそういうことになるのだろう。
彼女は理解しようにもできず、軽く混乱した。
「オレだって見つめるのは碁でもムサイ男どもじゃなくて、嬢ちゃんみたいな可愛い子がいいからな。な、いいだろ?」
「私をみてても、何も出ませんよ?」
「何かもらおうなんて期待してないさ。逆に……」
中途半端に切られ、気になり小首を傾げる。
「逆に、なんですか?」
「気になるかい?」
「気になると言えば、気になります」
正直に頷いて答えれば、彼はおおらかに笑った。
顔をはなし、ポンポンと優しく頭を撫でられる。大きく暖かな手だった。
「嬢ちゃんは本当に素直で、可愛いな。我が倅とは大違いだ」
「ヒノエさんが、ですか?」
「おうよ。……と、噂をすればだな」
どこか、部屋の外側に視線をやり、次の瞬間にはニヤリと意地悪く笑うのを彼女は見た。
「ヒノエさんがこれからいらっしゃるんですか?」
今日は外に出て仕事してるはずだから、邸にはいないはず。
「ああ、くるさ。多分、オレ達が一緒にいることを知ったから、駆けて戻ってきたんだろうな」
と話し終えた数秒後、御簾が乱暴にあげられる音がした。
驚き振り向くと、そこには影の人。
本当に急いで戻ってきたのだろう。肩が上下し、息が上がっていた。
「ヒノエさん!!」
立ちあがり、彼の人の元に寄る前に近づいてきた彼に抱き寄せられた。
力強く抱きしめられると同時に途端にふわりと彼の香りが広がり、鼻をくすぐる。
「何やってんだよ」
座っている男性と向き合うように立ったまま見る。
先ほどまで話していた人の声とは違う意味での、低い声。
「何って、可愛い義娘との交流だよ」
見てわからんのか、と横にどかされていたらしい碁盤を指さす男。
「余計な手を出してんじゃないだろうな」
「何もしてない。ただ嬢ちゃんがオレの目を気に入ってくれたんで、見つめあおうとしてたところに邪魔しやがって」
どうみても火に油を注いでいるとしか思えない台詞である。
「それのどこが何もしてないんだよ!!十分してるじゃねーか!」
彼の炎は文字通り更に燃え上がり、くわっとヒノエは牙を剥き出して威嚇した。
途端、彼の父は大きく口を開けて大笑いをしたのだった。
これが熊野頭領一家の一コマ。
終わり
湛快と絡んでみたかったんです(笑)
湛快はヒノエのことを可愛く頼もしく思いつつ、子を思う親心の裏返しでおちょくってるに違いないです。
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