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好きなものをつらつらと書き綴っています。 書人:蓮野 藍         三国恋戦記の孟徳に夢中。  ボカロ(心響)SSも始めました。
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三国恋戦記もののSS。二作目です。

孟徳×花。
ED後です。



二人以外猫も出ません。


といいつつ、SSという程の短さではなくなってます^^;







拍手[6回]


手探りで求めるものが見つからず、孟徳はふと目が覚めた。
深夜の、何時なのか全くわからない時刻。
宿直以外のものが全て寝付いているだろう時。
遠慮がちに吹く風によそよそとなびく木の流れの音を聞きながら、彼の探し物はすぐ見つかった。

こちらに背を向けて寝ているそれは、曹孟徳が愛する人。
きっと寝ている時に寝返りをうち、彼の腕が届かないところへいったのだろう。
孟徳自身の部屋にしろ花の自室にしろ、部屋は広く、寝台もまた広い。
寝相が悪くない彼女が手が届かない場所にいるのは珍しいが、これから度々あるようでは嫌だ。
一回り小さめの寝台に変えてしまおうか、と一瞬男は思った。
そうしてしまえば必然と彼女との密着度は増し、触れあえるのが増える。

だが、もしそうしてしまえば初心の彼女は恥じらい、逃げまではしないだろうが困った反応をするに違いない。
彼女を困らせてまで成し遂げたい事柄ではないので、一瞬考えたことをすぐになかったことにした。
曹孟徳にとって大切なのは自分のそばに彼女がいることであり、彼女が何事もなく元気でいること。
それ以上何も望まない。……というのは嘘かもしれない。
孟徳自身、出来ることならば彼女との子が欲しいのだから。


音をたてないように身体を少しずつ動かして彼女に近づき、自分のより小さく丸み帯びた背中を見つめる。
彼女が着ている寝着の白は暗闇の中で際立つ。
抱きしめる度に小さくて可愛いなと思う曹孟徳だが、華奢ですぐに手折れてしまいそうな線の細さは保護欲をそそられる。

「そっちにいったら寂しいよ」

甘みのある声で小さく話しかけ、そっと腕を少女のお腹あたりに伸ばして優しく抱き寄せる。
そして身体をぴったりくっつけるように近づいた。
ちょうど孟徳の顔あたりに少女の頭のてっぺんが見え、少女の優しい香りがして頬が綻む。
彼女の背からは彼女のぬくもりが衣越しに感じられ、彼女がここにいるのだと実感する。
少女の頭に頬を寄せ、軽く頬ずりをした。
すると更に彼女だけが持つ香りが感じられ、彼は幸福に満たさせる。
日本という遠い世界からきた、この世界では親戚など一人もいない世界に残った少女。
丞相という人物ではなく、曹孟徳という人物を愛してくれる希有な女性を始めは自分の好奇心から接していた人物が、今ではいなくてはならない存在になっている。

こんなにも大切な存在になるとは思わなかった。

というのが孟徳の見解だった。
飛天のごとき稀女がこの腕の中にいる。
着物越しに温もりを感じられ、寝息を感じられ、確かに少女は生きている。
それだけが嬉しくて、幸せのあまり思わず抱きしめる腕に力が入ってしまい、少女が小さく呻いたのでハッと我に返った。

息をひそめ、じっと彼女の様子をうかがう。
だが、起こしてしまったかもしれないという危惧は杞憂に終わり、有り難いことに寝返りをうって孟徳と向かい合わせになるようになった。
そして人の温もりが恋しいのか、身をすりよせてきたではないか。
孟徳の胸元に頬を寄せ、軽く擦りつけてくる。
胸が高鳴った。
「もしかして、寒い?」
一人話しかけ、やんわり抱き寄せる力を強めてみる。
すると少女の寝顔が緩み「もうとくしゃん……」と呟くものだからたまらない。
寝言でいうのだから、きっと夢には自分が出ているのだろう。
起きていても寝ていても、この少女は人をこんなにも喜ばせるのか。
心が沸き立ち、嬉しくて仕方がない。
「俺はここにいるよ」
優しく話しかけ、頭のつむじに口づける。
それから片手で少女の髪を梳くように撫で、改めて睡眠を貪るべく孟徳は瞳を閉じた。
彼女のそばでしか、静かな眠りはつけないことを孟徳はとうに気付いていた。

願わくば、少女と同じ夢を。



そして夜明けとなり。
いつもは花より先に起きる孟徳が寝過ごし、珍しく花が先に起きることになる。
自分を抱きしめるように眠る夫の顔を間近に見て顔を紅くし、声なき声を上げるのは別の話。










終わり
書きたい場面の一つだったけれど、まだ書き足りない……。
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