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好きなものをつらつらと書き綴っています。 書人:蓮野 藍         三国恋戦記の孟徳に夢中。  ボカロ(心響)SSも始めました。
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今回は孟徳と花孔明の話で前回更新した道つれづれの続編となります。


文章の長さは、いつも更新してる長さより若干長め。
要は長いという話ですね。




いつも拍手ありがとうございます!!





拍手[5回]





孔明は今更ながら後悔していた。
視察調査と称して曹孟徳のお膝下である街で歩いていたところで曹孟徳とバッタリ会ってしまい。
そして孟徳自ら街案内を買って出てくれたのは良い。
女好きの孟徳はその言葉通り女性に対する気遣いがいいのか孔明の歩調に合わせてゆっくり歩いてくれたり、何かと疲れていないか、喉は乾いてないかと言葉をかけてくる。
孔明の目的である橋や道路、民に対する規制、地方からやってきた商人などの決まりを細かく教え、孔明から出される質問にはちゃんと的確に答えてたりと、満足なくらいだ。

だがしかし。である。
表面上は献帝を天に頂き、戦なく三国が同時に並ぶという歴史史上かつてにない歴史を刻んでいるこの時。
そうなるまで例えるならば犬猿の仲。水と油。火と水という、どうやっても相容れない孟徳軍のトップである曹孟徳本人と玄徳軍の軍師を担う孔明が小腹を満たす為に一つの机を二人で向き合って座り、同じものを食すというのはいかがなるものか。

孔明の思案に全く気付いてないのか、孟徳本人は楽しそうにしてうる。
先ほどから笑みを浮かべながら注文したものをパクパクと食べている。
この中に毒があるかもしれないことを危惧してないのだろうか。

「どうしたの?もうお腹いっぱい?」

先ほどから孔明の箸が進んでないのが気になったのだろう。
箸を置き、笑みを顔から消してみつめてきた。

「私や貴方の正体を知ってる者がこの状態を見て、なんと思うかと考えていただけです」
「ああ、かなり面白い反応が見れそうだね」

文若は眉間の皺をすごい深くして、眉を吊り上げてさ。
漢はグッと眉間に皺をよせ、自由になった両手を使い眉を吊り上げてみせる。
目まで細めているので、その人物そっくり。その場にいるかのようだ。
あまりにも似ていて、十二分にあり得る反応に孔明は思わず笑みがこぼれ、笑い声を出しそうになった。

だがすぐ我に返り、わざとらしく箸を持ってない左手を握りコホンと咳を出して自分を落ちつける。

「面白がってる場合ではありません。これを見て、人は無いこと無いこと吹聴するのですから」
「ま、その時はその時で対応すればいいし、いいんじゃない?」
「よくありません……!!」

荒げたくなる声を必死に抑え、孔明は低く言い放った。
眉間に皺を寄ってるのは自覚している。

人の噂ほど怖いものはないと孔明は考えている。
人一人の憶測一つにどんどん背びれや尾びれが勝手にくっついて広まるのだから。
逆に、わざと嘘の噂を流すことによって敵方に誤算させることが出来るわけだが。

噂は単なる噂とみるべきではない。
それによって最悪の場合、人が命を失うことだってある。
ゆえに、あらぬ噂はあまり立たぬほうがいい。

丞相たる曹孟徳がそれをわからないはずはない。
なのにこの反応。

どういうことだ。
何か裏があるのではないかと孔明は目を細めた。

「……目が細くなってる。女の子がそんな顔してちゃ可愛くないよ。可愛くしてなくちゃ」
「私のこの顔は生まれつきです」
「うわ、本当にあいつがここにいるみたいだ。せっかく楽しくなってるのに台無しだよ」
「楽しい?」
ピクリと動いた孔明の片眉をみて、男は机に両腕を置き、上半身を前に倒す。彼の片耳に揺れる紅と金の飾りがチリンと鳴った。
二人の顔の距離が縮まり、まわりの賑やかな喧騒が遮断させたような感覚になり、まわりの音が一気に遠くなる。
「俺はね、君はそうじゃない?」
「いえ、貴方のおかげで思っていた以上の収穫があり嬉しく思います」
「そう?ならいいけど」
途端、孟徳の頬は緩んで嬉しそうな表情となる。
「はい、有難うございます。お礼としてはささやか過ぎますが、この場の食事代は私が払いますね」

何もせずに何かを貰ったり、してもらったりするのは孔明の心が許さない。
少しでも今日のお礼をしようと言った言葉だったが、相手はそれを許さなかった。

「仮にも君は女の子でしょう。俺はそんなに貧しくないし、女の子におごってもらうのは嫌だから駄目」
「しかし、そうしなければ私の気持ちが収まりません」

そしてお互いを見つめあうこと数秒。
先に口を開けたのは彼だった。

「……他のことで手を打つのはどう?」
「……貴方のところに行く、夫婦となる、一夜をともにする以外で、私に出来ることであれば」
「勿論、君に出来ることしか言わないさ」

にっこりと微笑む表情がいかにも偽物くさく孔明は見え、警戒を強めた。
相手は丞相まで上り詰めた男。
口がうまければ頭の回転もはない。
彼の口車にのらないように気をつけなければならない。

「そんなに身構えなくても大丈夫だよ。俺が君にしてほしいことは、ココに口付けてほしいだけだから」

『ココ』と言いながら孟徳が指さしたのは自分の頬。
頬に接吻しろ、と要求されたのがすぐわかり、孔明は顔を赤らめた。

「あなたは既に夫人がいらっしゃるだけでなく幾人もの妾や愛人もいらっしゃるのに、ですか?」
「うん。俺は君のことが好きだけど、なかなか触れてくれないし、触れられないからさ」

簡単だろ?と笑顔で言う彼の言葉は本当に簡単そうに思え。
実際に行動するのは簡単だろうけれど、そう簡単にはいかないことを孔明はわかっていたし、孟徳もわかっていた。

わざとだ。

すぐに孔明は悟った。
行動としてはとても簡単だけど、孔明にとって無理難題だとわかっててこの男はわざとこう言ってくるのだ。
ならば次の行動はこうである。

「……頬への口づけだけ、ですか?」
「そう、勿論。あまり無理強いさせたら君に嫌われちゃうからね」
「これだけで、今日のお礼となりますか?」
「ああ。もしかして、してくれるの?」

笑顔で頷き、身を乗り出して更に顔を近づけてくる孟徳。

今だ。
孔明は時を見定めた。

「ええ、これくらいならお安い御用です」

表面上は笑顔で。
だけど、軽く身を乗り出して片手で男の着物の襟部分を掴み、やや強めの力で引き寄せる。
引き寄せられるままに近づいてくる孟徳の軽く目を見張った顔を軽くみつめ、すばやく顔を近づけた。

軽い音とともに、近づけた顔はすぐ離し。
何事もなかったように席に座りなおした孔明は箸を手に、二人の間に置かれている更に手を伸ばした。

その間の時間、数秒もかからなかった。
まわりは相変わらずの喧騒ぶりで二人に何が起こったのか気付いてないらしい。
暫く状況を飲み込めず、呆けた表情していた孟徳だったが、時間が経つにつれ何をされたのかわかったのか、カッと顔が紅くなるのを孔明は見て見ぬふりをして小さな饅頭を口にした。
中の肉汁がブワッと出てきて、少し火傷をしそうだった。

誰しも見られたくない姿の一つや二つはある。
だから見て見ぬふりしていたのだが、やや時間をおいて孟徳は口を開いた。

「君って、頭はやたらと回るけれど、たまに行動も凄く豪快だね」
「何のことです?もう食べないようなら、私が食べてしまいますが」
「ああ。俺はもういいよ。食べて」
「そうですか。なら遠慮なく」

残ってるのをもらうべくお皿を自分をほうに引き寄せ、パクパクと孔明は箸を進めた。
数分しないうちに食事を終えた孔明は孟徳のお金で食事代は払われて店を出た。
日が落ちる前らしく、人々の影が長くなっている。

「そろそろお別れだね」
「そうですね。完全に日がくれる前にお戻り下さい。でないと貴方を探している方々に私が恨まれてしまいますので」
「俺が勝手に街に降りてきて、君を連れまわしてたんだから恨まれないよ」
「文若殿のお顔がとてつもなく怖いことになってそうな気がするのですが、気のせいでしょうか」
「ああ。それは怖いね。あと元譲の無言の睨みも」
「本当にそう思ってますか?」
「……孔明は騙されないか」
「これでも軍師をやっておりますので」

澄ました表情をして答える孔明に、孟徳はクスリと笑った。

「やっぱり欲しいな、君が」
「無理です。これ以上何でも手に入ったら罰が当たりますよ」

「もう俺は罰しか当たらないよ」

サラッと軽く流された言葉。
孔明は息をとめ、目を軽く見開いた。

「さて、君を宿に送ってから俺は戻るよ。君に何かあったら玄徳や芙蓉ちゃんに恨まれるからね」
「あなたという人は……」

おどけて離す男に孔明は苦笑し、仕方ないという様子で彼に宿泊先への道を教えた。
今日の礼はすでに払っている。けれど同時に孟徳の貴重な時間をもらってるわけだから、これくらいはいいだろう。

近すぎず遠すぎない距離を保って並ぶ二人の影が長くのびている。















終わりです
とりあえず、これで終わりです。
本当は乱闘も入れようかと思ってたのですが、思ってた以上に長くなり、諦めました。
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