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好きなものをつらつらと書き綴っています。 書人:蓮野 藍         三国恋戦記の孟徳に夢中。  ボカロ(心響)SSも始めました。
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前回講更新した駆け引きは突然やってくるの続きとなります。

孟徳と花孔明な話です。



大変長らくお待たせいたしました……!!













拍手[9回]




何万もの兵を持ち、三国一の国土や民を有する曹孟徳。
冷酷で無慈悲の人として民には伝わっているが、孔明の視点からしてみたら彼はやたらと頭がきれる油断大敵な人物だった。
宦官の子でありつつ今の地位まで登りつめるだけでなく、多くの部下を持ちながら能ある者を日常的に引き入れようとしていることを孔明は知っている。
能ある者ならば血筋に関係なく誰でも採用するのが彼の魅力の一つだろう。

だがその半面、女好きとしても有名だった。

天下が三分されているとはいえ、それまでは皇帝陛下に継ぐ地位を持った男。
それだけでなく見目が麗しく女に甘い。
顔が良い・地位(お金)がある・(女性に対して)優しい。
この三拍子そろった男を女性達がほっとく訳がなく、一夜だけでいいからと曹孟徳の情けを欲する女性が山ほどいる。そのまま彼の情けが続き、愛妾となった女性もいるかもしれない。

曹孟徳には長く連れ添っている女性もいるから、彼を夫としている女性は一人ではないということを孔明は、言うまでもなくわかっている。
彼の寵を得た女性達は孟徳が持つ別宅に住んでいるということも。


その男が自分に言った言葉が一体どういう意味を持つのか。
孔明にはそこがわからなかった。

「孟徳様、失礼を承知でいくつか伺わせていただいて宜しいでしょうか」
「ん?俺に答えられることなら何でもどうぞ」
「有難うございます」

窓辺に両腕を置き、そのまま身をやんわり乗り出してくる。
その瞳には穏やかなものが宿られているのを孔明は見て見ぬふりをし、緩やかな風が吹くようなゆっくりとした動きで礼をとった。
そしてやんわりと手にしていた羽扇を動かし、孔明はしっかりと孟徳の目を見つめて言葉を発する。

「孟徳様には何人か愛妾と世間では括られる奥方が幾人かいらっしゃられますよね?」
「そうだね。長く連れ添ってるのもいるよ。それから?」
「ならば、私が貴方の言葉に応える必要はないのではないですか?」

妻になる、とは婚姻を結ぶということ。
一生連れ添って生きていくという意味合いになる。
子供でもわかる意味を再確認し、孟徳の『嫁にこない?』の言葉をアッサリと孔明は断った。

主君たる劉玄徳の元で働き、ちゃんと給料は貰えている。
貰えるのは目の前にいる人物ほどではないけれど、孔明自身お金が欲しいわけでも贅沢したいわけでもない。
劉玄徳のもとで働き、役立てるというだけで嬉しい。
孔明にとってそれだけで十分なのだ。
それ以上は望まない。
仮に孔明の能力を欲しての発言だとしても、伏龍の名に近い者を孟徳自身がいつか発掘し採用するだろう。
能ある者をほっとくわけがないのだから。曹孟徳という男は。

ゆえに孟徳の言葉に断りの言葉を言ったのに、目の前にいる当の本人はガックリしているのはなぜだ。

丞相のこのような姿はなかなか見られるものではない。
孔明は珍しいものを見た。とほんの少しの得を感じた。

「孔明……」
「何でしょう」

唸るような低い声に平然と答える孔明に、紅き覇王は鳶色の瞳をこちらに向けた。

「孔明、お前が欲しいって、俺は言ってるんだけどな?」
「私ほどの力を持つ者はそうそういないでしょうが、まあ、いつか見つかるでしょう。それに既に文若殿がいらっしゃるのですから、いいではありませんか」
「それは君の能力は喉が手が出る程欲しいし、文若は俺の王佐だから満足してるさ。だが、俺が言ってるのはそうではなくて」

言葉をいったん切り、一呼吸を置いて彼は言った。

「俺は孔明、君自身丸ごと欲しいと言ってるんだ」
「しかし、丞相にはもう既に……」
「愛人や奥方がいる。そう言いたいんだろう?」
「はい」

孔明の言葉を続くように言う孟徳の言葉に、孔明は素直に頷いた。
この世の中では一夫多妻制がとられているから、沢山の妻がいるのは構わないとされている。
そうしなければ、家が絶えてしまう恐れがあるから。

しかし、孟徳には既に妻と呼んでもいい存在がいる。
わざわざ孔明のような存在を妻に乞わなくても相手は選び放題だというのに。
なぜそれが分からないのだ、と孔明は言いたい。

「俺の妻になるのは嫌?」
「まあ、貴方様の妻になるのは大変でしょうね」

ただでさえ表舞台に立てないだろうに他の方と仲良くしようにも加わりたくもない派閥争いに巻き込まれて丞相の寵をより深く受けようと蹴り落されようとしたり。
面倒くさそうなことこの上ない。

つらつらと淀みなく答える孔明に孟徳は苦笑した。

「そうだろうね。でも、俺が愛妾全て整理して君だけを迎え入れ、君が表舞台に立てるようになるとしたら?」

「丞相……」

甘い言葉を囁きかけるように優しく話しかける孟徳の言葉に、今度は孔明が溜息をついた。
静かな夜更けに、息を吐く音が鮮明に響きわたる。

「何回でも言いますが、私が仕えるのは玄徳様のみ。我が君のお傍を離れる気は更々ありませんし、星がそう定めてます」
「星が?孔明がずっと玄徳の傍にいるって?」
「ええ。今も変わらず私の星は玄徳様の星のそばにありますので」

星見をしていて、劉玄徳の星のそばには常に雲長や翼徳の星を始め孔明や芙蓉姫の星が強く輝いている。
それは今は勿論、孔明が仕え始めてからずっと変わらない位置にある星々。
永久に続くという星の導き。


「星は、これからも変わらない?」
「一寸の変化がございません」
「へえ、なら俺が動かしてみせようか。孔明の星を」

サラリと流れた言葉。
思わず聞き流してしまいそうな言葉だったが、孔明は聞き逃さなかった。

「……丞相が、ですか?」
「そ、俺が」

ニンマリと顔に浮かんだ笑みはどこか無邪気に笑う子供に見え、よからぬことを企んでる悪の笑みにも見える。

「前から思うけれど玄徳は恵まれすぎだろ。雲長といい芙蓉姫といい」
「その代わりに丞相には沢山の知恵者や猛者がいらっしゃるでしょうに」
「諸葛家の人間がいるのは玄徳のところと孫家の倅のところだけで、俺のところにいないのは不公平だ」
「そういう星の巡りだったのですから、仕方ないでしょう」

まるで駄々をこねる子供そのもので、玄徳軍の軍師は半ばあきれた。
これがかの冷酷無慈悲な曹孟徳だと誰が思うだろうか。

「だから俺は決めた。孔明、お前を玄徳から奪う」
「……だから星を動かす、と」
「そういうこと。覚悟しとけよ?孔明」

先ほどとは違う、獲物を狙う猛獣の瞳をした姿に軽く息をのんだ。
丞相という地位に登りつめ、誰しもが丞相と膝を折り頭を下げる紅き覇王がそこにいる。
誰にも近づけさせない気高き風格がある孤高の男。

孔明は心が高鳴った。
そしてやんわり羽扇で動かして口の端に弧を描く。

やすやすと丞相の望み通りになるのは気に障るし、主君のそばを離れたくない。
ずっと玄徳の元にいるためには、目の前にいる人物との勝負に勝つしか方法がない。
そうしなければ、曹孟徳という男は何をしでかしてくれるかわからない。

孟徳との勝負。
そうそうできるものではない。
これが孔明の心を動かした。


想像するだけで面白い。


「望むところです、丞相」
「俺は本気だ。手加減もしない」
「こちらこそ、本気でいかせていただきます」

恭しくお辞儀をし、二人は不敵な笑みを交わした。
その間に風が吹き、二人の髪を撫でて去る。













終わり
終わり、に出来ませんでした^^;
しかも花孔明に火がついちゃいました。
この続きは孟徳と花孔明の他人には見えるようで見えない攻防戦が繰り広げられるわけですが、この先は皆さまの想像でお願いいたしますm(__)m

ああ、しかめっ面の文若が目に浮かぶ(笑)
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