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好きなものをつらつらと書き綴っています。 書人:蓮野 藍         三国恋戦記の孟徳に夢中。  ボカロ(心響)SSも始めました。
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ツイッターの第8回十二国記絵描き文字書き60分一本勝負にて。

お題は『思いがけない出会い』

景麒と延麒。
と少しだけ陽子。




拍手[2回]







お互いの視線が絡み合う。
そして二人だけの間に時間が止まった。
二人の視線は絡まったまま途切れることなく、はずれることもない。
動きもない。親しげに歩みよることもない。
互いが互いの素性を知っている。
同胞だから、といったほうがはやい。
それくらい二人は互いを知っている。だが、お互い詳しく知りもしない。
その必要性がないのだから。
挨拶くらいかわしてもいい間柄のはずだが、長身の男が歩み寄ってこないのだから、相手側もしない。
ただ、相手より背が小さい自分が歩くと大いに疲れるという理由から。
どうみても年下にみえる少年だが、見た目が大人より実年齢が高い。ゆえに、年下の野郎に自分から歩み寄ることはない。今はそういう気分だ。
二人の共通点といえば、頭を隠す大きな布。
これだけであることが証明させてしまうのだから、二人は頭を。髪を隠している。

この二人の間に、黒い髪をした幼い少年がいたのなら話は違うかもしれない。
幼くしてまっすぐな少年を知る彼ら二人なら、お互い譲歩して歩み寄るかもしれない。
だが、あいにくその少年は今、この場にいない。

二人の間に風が通り、過ぎ去っていく。
書き忘れていたが、二人の間は遠く、近くはない。
かといって、近すぎることもない。
お互いの気配がお互いを知らせ、こうしてお互いの顔がわかるくらいの距離まで縮んだ。
が、これ以上距離が縮まないという話だ。視線も絡み合ったまま、はずれない。
涼しさを感じさせる視線が、ふと途切れた。
視線が違う方向へ向かう。
少年が同じ方向へ視線をずらすと、長身の男の近くに鮮やかな髪をした少女が駆け寄ってきた。
この少女が誰かも、この二人は知っている。片方は、知りすぎるくらいに知っている。
鮮やかな深紅の少女は何かを長身の男に告げた後、まだ用事があるのか、その場を立ち去った。
街の調査というところか。少年は声にならない声で呟いた。
呟きに気付いてか、長身の視線が再度戻ってきた。
距離があるものの、若干の慎重さが遠くてもあるのを感じなくはない。
いつものことだと感じつつ、ふと長身が両腕を顔の前にささげ、少年に会釈をしてきた。
場所柄、これくらいで仕方がない。
ここは街なのだから。
お互いの素性がここで分かったら、騒ぎどころではすまない。
大騒ぎでもすまないかもしれない。
なので、少年も相手に会釈して、この場を立ち去ることにした。

鮮やかな紅い髪をした少女をみたら、黒い髪の大漢を思い出した。
色々と面倒くさがり屋な奴だが、あの男のおかげで今の国が成り立っているのだ。
今もしっかり勤務しているか見たくなった。
きっと、怠けているに違いないだろうが。
断じて、会いたくなったわけではない。
少年は断言した。
紅い少女は真面目。
黒い髪の男は真面目な時があまりないのだが、国を思う気持ちは少女と同じ。
だから、見届けるのだ。
少年は自分の結論にいたく気に入ったのか、満足げに頷いた。
そのまま祖国への道をたどる。


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